大津オルタナティブスクール トライアンフ

Thoughts 不登校への想い

不登校の現状と
フリースクールの支援

2022年調査では、全国の小中学生の不登校数は30万人に迫る勢いです。

新型コロナウイルス感染拡大時に学校が休校となり、学校に登校することの意義がみなおされたり、教員の多忙さやなり手の少なさが文部科学省の#教師のバトンで浮き彫りになり、「多様な学び」の必要性が着目されはじめています。

学校にICTが取り入れられるようになり、少し変わってきたかのようにみえますが、まだまだ道半ばでしょう。150年ほど前から変わっていないとされている日本の教育は欧米諸国からするとガラパゴス状態です。日本の教育予算についても、一般政府総支出に占める教育費の割合は9.4%とOECD加盟31か国中30位となっています。 (『教育指標の国際比較』文部科学省)

なぜ不登校は増えているのか

わたしが小学生の頃は、クラスにとんでもなくだらしがなかったり、机の中がグチャグチャだったり、勉強はろくにできず、給食と走るのだけは得意というような子どもがいました。病気で車いすにのってお母さんと一緒に登校している子どももいました。

とくに仲良く友達になるわけでもなく、かといっていじめたり、コソコソ噂話をしたりするわけでもなく、「そこにいる」というだけでクラスに存在していました。それで別によかったのです。

最近はきっちりと勉強してドリルを提出しなければならず、忘れ物をすると怒られ、回数を数えられ内申点に響きます。字も、書き順正しく、トメハネもちゃんとしないと、「受験の時に困るから」という理由で指導されます。

SNSでは友達に気をつかいながら返信の言葉に悩んだり、既読がつくかつかないか、スルーされてるんじゃないかと気をもんでいます。昔のように、玄関で「遊びましょ」とお誘いをかけるのは迷惑になるのでご法度です。大変な時代になりました。

学校も社会も、随分と変化しているように感じます。

ちょうどうまく「学校のシステム」にはまる子どもでないと行けなくなる。学校に行ける子どものストライクゾーンが狭くなっていると思います。

どっちかよかったのかはわかりません。でも不登校の子どもが増え、さらに格差社会となり、子どもや若者の自殺率は高く、日本のGDPは後退しています。

学校は豊潤な森のように、いろいろな動物がすみ、多様な植物が生い茂り、それぞれがそれぞれの役割を果たしながらうまく調和しているような環境であってほしいと思います。

それが「インクルーシブ」という言葉になるわけですが、昔は「インクルーシブ」と言わなくても「インクルーシブ」な状態であったのです。声高々に「インクルーシブ」をさけばないといけないということは、「インクルーシブ」な状態にないということだと私は思います。

単に昔の方が良かったというわけではありませんが、今の子どもたちがおかれている困難な状態は、おとなの私たちも知っておくべきだと思います。こういった社会を作り上げたのはわたしたちなのですから。

本当に学校に行かなくても大丈夫なのか

今や、通信制高校の広がりや「多様な学び」が認められてきており、これまでの「良い高校」「良い大学」「良い就職先」という一見王道に見えるようなルート以外の生き方も着目されてきています。

”今の子どもたちの65%は大学卒業時に今は存在していない職業につく、今後10~20年で雇用者の約47%の仕事が自動化される” (キャシー・デビッドソン 米デューク大学 2011)

AIの発展により、将来を予測することが困難な時代を子どもたちは生きています。

社会の変化に飲み込まれるのではなく、自分の頭で考え、主体的に課題を発見し、他者とともに解決をしていく、そんな新しい価値をつくりだす力が子どもたちには必要です。

おとなは旧態然として嫌がる子どもに「学校に行け」と言い、「行けば何とかなる」と思い、実は子どもの未来を狭めているのではないか、そんな可能性も頭においておくべきでしょう。

おとなたちこそ、自らの頭で考え、時代にあわせてアップデートする必要があると思います。

フリースクールになにができるのか

トライアンフには学校で傷ついた子どもたちがたくさんやってきます。

こういうと「近頃の子どもはすぐに傷つく…」「そんなことで傷ついたなんて...」という声が聞こえてきそうですが、やることが多い、たくさんの指示に従わなくてはいけない、大声で叱られる、あるいは叱られている人をみる、そんなことが傷つきの原因にもなっています。

トライアンフでは穏やかに丁寧に子どもと接するようにしています。話をよく聞き、否定しません。それだけのことですが、子どもの声をしっかり聞くことが大切です。
学校では先生が忙しく、欠員さえあったり、ひとりひとりにじっくりと向き合う時間がありません。

自分の思いにしっかりと寄り添ってくれた大人には子どもたちは心をひらきます。
おうちのことや嫌だったこと、こうしたい、ああしたい、ネガティブなことも含めてたくさんの声をあげてくれます。

そうして「ここには自分を認めてくれる大人がいる」ということを知り、居場所として認めてもらえるようになります。

学校という居場所を失った子どもたちには、家庭以外の第3の居場所が必要だとおもっています。そんな居場所があるからこそ、ちょっとチャレンジしてみよう、失敗しても大丈夫だと思え、自己肯定感がつちかわれはじめます。

まずは安心安全な居場所で心を癒し、それからエネルギーをチャージしていけばよいと考えています。

一般社団法人異才ネットワーク 代表理事
大津オルタナティブスクール トライアンフ代表
谷川 知

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